2019国際食品工業展

7月9日(火)-7月12日(金) 東京ビッグサイト・東1-8ホール 10:00-17:00

研究概要

凍結処理がイカ外套膜筋のATP関連物質に及ぼす影響

研究機関名

北海道立工業技術センター 研究開発部 食産業技術支援グループ

代表者

木下 康宣(キノシタ ヤスノリ)

本研究の主旨

多くの水産物では、鮮度が最も重要な品質要素の一つとされている。特に、非凍結状態の水産物では、ATP(アデノシン三りん酸)関連物質が食感や食味といった様々な品質に強く影響を及ぼすことが明らかになっていることから、致死後に起こる生化学的な変化により変化するK-valueやATP(アデノシン三りん酸)含有量といったATP関連物質の分解・蓄積に関係した数値が鮮度指標として広く利用されている。一方で、近年は冷凍インフラの充実により、鮮度の良い水産物を凍結保管流通する例が多く見られる。しかしながら、こうした水産物でも、先の数値が原料鮮度を反映していると予想される一方で、それを示す報告は乏しい。そこで、本研究では、イカ外套膜筋をモデル試料として、凍結処理が水産物のATP関連物質に及ぼす影響を検討した。
その結果、(1) -20℃で保管した場合は、保管開始時からATP含有量の低下が認められる、(2)こうした変化は、少なくとも保管28日間において、-40℃以下では抑制される、(3)この時、ATP含有量の減少に伴い、その分解により生成されることが知られているADP(アデノシン二りん酸)、AMP(アデニル酸)、HxR(イノシン)、Hx(ヒポキサンチン)といった物質の蓄積が認められ、K-valueが上昇する、ことが示された。
これらの結果から、水産物の一般的な商用凍結保管温度である-20℃程度の保管では、凍結時の原料鮮度を表す指標として、ATP含有量やK-Valueが利用できないことが明らかになった。産業上、凍結水産物も凍結時の鮮度の良し悪しが重要な品質要素と考えられていることから、今後はそれを客観的に評価する指標の開発が必要と思われる。更に、こうした温度帯で起こるATP関連物質の変化が食味や食感といった具体的な品質にどのような影響を及ぼすのかについても、興味が持たれる。得られた結果の理解を深めるには、今後更に、凍結保管中におけるATP関連物質の変動と品質に関わる研究を進めなければならないが、本結果は、成熟した感がある水産物の冷凍処理に新たな技術的課題があることを示唆するものとして注目される。また同時に、現状の産業的な冷凍システムにもまだ伸びしろがあることを示唆していると捉えることができ、興味深い。

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