研究概要

CO2レーザによる食品内部のピンポイント加熱方法の開発

  • テーマ

    衛生対策・品質管理(殺菌、洗浄、異物除去含む)

  • 研究機関名

    石川県立大学 生物資源環境学部 食品科学科 食品加工学研究室

  • 代表者

    藤田萩乃

  • 本研究の主旨

    殻付きの牡蠣やホタテ貝等の2枚貝を開き,生食すると,そのおいしさに刮目する。生食が危険であることは一般消費者にも周知の事実ではあるが,令和元年度の厚生労働省「食中毒統計調査」によると,ノロウイルスによる食中毒事例数は212件で患者数は6,889人であり過去10年ではやや減少傾向にはあるものの,毎年他の原因菌より3倍から10倍の件数にのぼる。近年,フードチェーンに関わる業種では従業員に牡蠣の生食を禁止していることが多く,食べたくても食べられないのが現状である。
    長年にわたる牡蠣の生態や養殖に関する研究から,牡蠣やホタテ貝を汚染している菌の住処は限定的であることが知られており,海水中のプランクトンにウイルスや細菌が付着していた場合,それらは中腸腺という身の中に埋没した臓器に蓄積され,滅菌海水で浄化しても72~96時間残留することが報告されている。Fig.1に牡蠣の臓器と中腸線の位置を示す。
    現在,食品殺菌の主流は加熱殺菌である。そして殺菌の確実性のための殺菌強度と食材の持つおいしさを保持することはトレードオフの関係にある。このような従来の加熱殺菌の方法は食材のあらゆる部位に作用させてきたためであり,ターゲット臓器をピンポイントで狙い,加熱殺菌することができれば食品本来のおいしさを著しく損なうことはなくなるはずである。しかしながらターゲット臓器が食品の表面にない場合は部分的な加熱は難しい。
    そこで埋没した臓器をピンポイントで加熱する方法としてCO2レーザの照射を検討する。CO2レーザは水や有機物の分子振動を誘発する波長域にあり,プラスチック加工や医療器具として利用されている。食品の加熱に利用された例はほとんどないがレーザの指向性によれば,食品の内部をピンポイントで貫き,加熱できる可能性がある。本展示では,CO2レーザを用いて生食のニーズの高い牡蠣を安全に生食することができる新たな加熱殺菌の方法を提示する。
    Fig. 2にレーザ照射装置の全体像を示す。数点のスポット照射で99.5%の殺菌効果を得ることができた。Fig.3に照射後の牡蠣のイメージを示す。
    生食のニーズの高い食品は牡蠣の他にもタニシやホタテ,卵巣などがあり,牛・豚・鶏のレバーの生食にも根強いニーズがある。本研究により菌やウイルスに汚染された部位のみをピンポイントで加熱殺菌し,他の部位を生に保つことができるようになれば,作業ミスや誤食による痛ましい事故を未然に防ぐことができる。