研究概要

食品有害菌を自死させる殺菌法とその応用

研究機関名

大阪府立大学 研究推進機構 21世紀科学研究所 微生物制御研究センター 制御技術/検査部門

代表者

古田 雅一

本研究の主旨

①殺菌法: 殺菌法には、加熱や高圧、放射線などの物理的方法、殺菌・消毒剤、抗菌剤による化学的方法があるが、ここで紹介する殺菌法は細胞の自死を誘発させるというユニークな生物学的殺菌法。
②背景:食品殺菌法では、加熱や高圧など積極的に(いわば力づくで)有害微生物を“殺し”にかかる方法が主体。本法は当研究室の土戸が1996年(関西大学所属時代)に提唱 (Biocontrol Sci., 1, 19-24)。これまでの一般的な殺菌法と異なり、低エネルギー負荷、低コスト、安全性、低環境負荷などの点で他の殺菌法よりも優れた特徴を持つユニークなもの(“ふーま(Food Machinery)”, 16巻1号, 20-23, 1999年;“食品工業”, 51巻14号, 20-26, 2008年;『食品における非加熱殺菌技術』, pp. 101-109, 2013年, NTSなどで発表)。
③細胞における合成と分解: 一般に、生物細胞ではタンパク質や細胞膜などその構成要素は常に代謝回転しており、合成と分解の両プロセスのバランスの中で生きている(図1)。
④目的:マイルドに微生物の持つ自己分解活性を誘発させて自発的な死滅を起こす殺菌法のメカニズムの解明。HACCPの制度化を考慮した食品汚染菌の制御や一般環境での殺菌への実用化。
⑤自死誘発方法:この方法では、従来実施した低温ショック、乳化剤添加や加温など、ちょっとしたきっかけを与えることによって彼らの持つ分解制御能を乱し、その分解機能を活性化・顕在化させて死滅させる(図1)。
⑥発表内容:FOOMA JAPAN アカデミックプラザでは、すでに1999年頃、2007年、2009年と3回にわたって発表。今回は、その後の進展を含め、微生物制御における本殺菌法の原理上の概念を包括的に提示。また、HACCP制度化に伴う有効な微生物制御効果の確保における本殺菌法の実用化の可能性と制限的条件について発表。
発表項目:以前の発表の成果を含め、以下の個別の基盤原理となる自死誘発機構(図2)を紹介し、今後の応用について展望。1) 低温ショック・食品乳化剤による枯草菌の細胞壁分解酵素の活性化による溶菌死の研究、2) DNA分解酵素の活性化による枯草菌の細胞死, 3) 食品乳化剤による酵母の液胞破壊死、4) カビ胞子の低温加熱による液胞破壊死、5) 微生物全般の生理学的細胞死誘発制御法の開発のための基本概念の構築(図2)。